草木

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草木は小さな集落である。

南西に穿つタチ沢の沢筋に沿って若干開けたる外は、ほぼ四方が山に囲まれた小さな集落だ。

かつては十六世帯が生活していたと聞くが、今では五世帯のみ。

なかでも県道から入ること約1㎞、林道のほぼ最深部に草庵(狸尚庵)はある。

二千坪ほどはあろうか、緩やかな傾斜地に、現在は三世帯のみが屋根を寄せ合うように生活している。

 

先日其処に埼玉県の或る航空会社が空撮写真を売り込みに来た。

一枚も売れなかったと記憶している。

何も二万円という金額ばかりが理由ではないのは明白だ。

山家暮らしは誇ることがないのである。

自分の家が映っていようがいまいが、関係ないのだ。

作物の生育は比べても、他人と自分を比べる意味が全くないのである。

偶然に生やした草木の根子のようなもので、何年も何年も其処に営々と生きるだけなのである。

私は・・・

「今の時代、グーグルアースやドローンというものがあるのに、何故二万円出して買わにゃならんのか」というのが理由であったが、・・・しばらくして、自分の断り文句の薄っぺらさに恥じた。

 

五十年余りの都会生活で私は消費ばかりを人と競ってきた気がする。

人より多くを消費すればするほど快適さを得られるのが都会生活であった。

 

今、三軒だけの草木の地で私自身にも小さな小さな根子が生え始めたことに無上の喜びを感じている。

 

“梅雨寒の山を低しと峪の底”

狸尚庵 亭主

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